SNS費用計算編 | ソーシャルメディアにおけるリスクを「お金に換算」してみよう

2023年5月4日 6 min read

こんにちは、ソーシャルメディアマーケティングのエキスパートStatusbrewです。

企業のソーシャルメディア運用におけるリスク管理の重要性については度々Statusbrewでも話題にしてきました。

ソーシャルメディアを運用するなら知っておきたい6種類のリスクと緩和法
無人?有人?どっちがいいの?企業のソーシャルメディア監視体制の設計!
業のSNS運用リスクは"社内=従業員"が起因!コンテンツ監視実践法

ソーシャルメディアに限らず、自社の商品やサービスをより幅広いユーザーに知ってもらいたい、とマーケティングを行う場合、どんなに良い商品でもリスクはつきものです。

ところが意外にもマーケティング(ここではソーシャルメディアマーケティングについて話しますが)を行う上で、リスク管理をプロジェクト化していない企業様が多いように見受けられます。

リスクというのは懸念されるべき事象であり、それが過去に1度でも発生すればそれは発生率100%として算出できるのですが、リスクのスコアリングは非常に重要であり、適切な対策を講じるためにはリスクの特定、分析、評価が必要です。

ソーシャルメディアだけに限定されないのですが、せっかくマーケティングを行い販路拡大するにあたって、マーケターが避けたいのは何よりも「余計なコストがかかること」も入っているのではないでしょうか?

なぜならマーケティングにおいて費用とは企業の予算の中でどこまで割り当てられてもらえるのか?も重要な要素だからです。

実際にソーシャルメディアで起こるリスクを「お金で換算」してみましょう

前回のブログ「企業が見逃しがちなソーシャルメディアのリスクをスコアリングする方法では、リスクをスコア化する具体的な算出方法についてお伝えしました。

提供:Statusbrew

リスクのスコアリングとは、リスク評価のスコアと同じものである

リスクのスコアリングは、リスク評価の一部であり、リスクを定量化し、比較可能な形で示すプロセスです。リスク評価は、リスク特定、リスク分析、およびリスク評価の3つのステップで構成されており、リスクスコアリングはリスク分析と評価の段階で使用されます。

リスクのスコアリングでは、リスクの発生確率とその影響を数値で表現します。これにより、リスクを優先順位付けし、リソースの割り当てや対策の選択を効果的に行うことができます。

リスク評価のスコアは、リスクスコアリングによって得られた数値を指します。このスコアは、リスク管理の意思決定に役立つよう、リスクの大きさや重要度を比較可能な形で示すものです。つまり、リスクのスコアリングはリスク評価の一部であり、リスク評価のスコアを生成するプロセスと言えます。

ケースステディー: 全国に300店舗ある飲食店がネガティブなコメントを受け取る場合

Photo by Hari Panicker / Unsplash

例えば、全国300店舗あるラーメン屋チェーンで、お客様からのネガティブなフィードバックが毎月、20件あるとします。

「ラーメン提供までの時間がかかりすぎている」
「店員の接客態度が悪かった」

これらは明らかに、ポジティブではなく、ネガティブなフィードバックですよね。

それを1年に換算すると、単純計算して240件のネガティブなフィードバックがあると考えられます。1年間に発生するネガティブなフィードバックは240件で、これを全国の店舗数である300店舗で割ります。

まずこれはどのようなリスクになりますか?「今後見込めるはずの売り上げという機会損失:でしょうか?またこのフィードバックに一つ一つ対応するための人的損害でしょうか? これらのリスクが発生することでどのような費用が発生するかを、マーケティング責任者やソーシャルメディアマネージャーであれば必ず考えなくてはなりません。

このラーメン屋のケースでは、ネガティブなフィードバックによるリスクは、機会損失や対応するための人的損害など複数の要素が組み合わさったものになります。それぞれの要素についてお金に換算してみましょう。

1.機会損失 ネガティブなフィードバックが顧客に与える影響を考慮し、その結果として失われる潜在的な売上を推定してみました。例えば、1件のネガティブなフィードバックが5人の顧客を失うことにつながると仮定しましょう。そして、1人あたりの平均売上が1,000円(東京都でのラーメン1杯のおおよその価格)だと仮定します。

機会損失 = ネガティブフィードバック × 失われた顧客数 × 顧客あたりの平均売上 機会損失 = 240件 × 5人 × 1,000円 = 1,200,000円 と計算がきます

補足事項

5人という数字は、ネガティブなフィードバック1件に対して、おおよそ5人の顧客が影響を受けると仮定しています。この数字はあくまで一例であり、実際の状況によって変わることがあります。

この仮定に基づいて機会損失を計算すると、240件のネガティブなフィードバックによって、1,200人(240件 × 5人)の顧客が影響を受けることになります。顧客1人あたりの損失が1,000円だとすると、年間の機会損失は1,200,000円(240件 × 5人 × 1,000円)となります。

2. 対応するための人的損害 ネガティブなフィードバックへの対応には、対応チームの人員や時間がかかります。例えば、1件のフィードバックに対応するのに平均1時間かかると仮定し、対応担当者の時給が1,500円だと仮定します。

人的損害 = ネガティブフィードバック × 対応時間 × 時給 = 240件 × 1時間 × 1,500円 = 360,000円

この例では、機会損失と対応するための人的損害を合わせて、 合計損害 = 1,200,000円 + 360,000円 = 1,560,000円 となります。

これを大きなコストかどうか?は企業の資本力や予算によるのですが、少なくともこのようなコストは必ず視野に入れておくべきでしょう。

エスカレーションが必要な場合はコストが倍!?

ネガティブなフィードバックのエスカレーションが発生した場合、処理にかかる費用は通常よりも高くなります。

  1. 時間のコスト: エスカレーションが発生すると、問題を解決するために、より多くの時間が必要になります。それは1人の人だけでは解決できないような、より重要度の高い、重い内容である場合がほとんどだからです。その結果、従業員が他の業務に充てることができる時間が減少し、生産性が低下する可能性があります。
  2. 人件費: エスカレーションは、通常の担当者だけでなく、上位の管理職や広報や法務部など専門チームの人間が関与することがあります。これらの人々の時間も費用に含まれるため、人件費が増加します。

ソーシャルメディアではどのようなリスクがあると、「余計なコスト」が発生してしまうのか?

ソーシャルメディアではリスクはつきものですが、「結果としてコストがかさむ」事象についてまずは触れておきましょう。

  1. ブランドの評判悪化: ビジネスによっては最もありがちなリスクです。いえ、もはや世界中すべてのビジネスと言っても過言ではありません。コメントや虚偽の情報が拡散されると、ブランドの評判が悪化し、顧客の信頼が失われる可能性があります。これにより、売上減少やクレーム対応にかかるコストが発生することがあります。
  2. 法的問題: 違法なコンテンツの投稿や著作権侵害が発生した場合、企業は法的な問題に直面し、訴訟費用や賠償金を支払う必要があります。これはソーシャルメディアのコンプライアンスなど企業が定めているかどうかに大きく依存します。
  3. セキュリティ上のリスク: 不正アクセスやデータ漏洩が発生すると、顧客情報の損失や法的責任が生じ、その対応に莫大なコストがかかることがあります。また、セキュリティ対策の強化にもコストが発生します。
  4. 対応費用: ネガティブなコメントやクレームに対処するために、企業は対応チームを編成し、迅速かつ適切な対応を行う必要があります。この対応には、人件費や時間がかかり、結果的にコストが発生します。
  5. プロジェクトの遅延またはキャンセル: ソーシャルメディア上で起こる問題がプロジェクトの進行に影響を与える場合、遅延やキャンセルが発生し、それに伴うコストが発生します。
  6. 従業員のモラル低下: ソーシャルメディア上での問題が従業員のモラルやモチベーションを低下させることがあります。これにより、生産性が低下し、採用や研修などのコストが増加する可能性があります。

ソーシャルメディアのリスクをお金で換算することは良いことですか?

私たちStatusbrewは、リスクのスコアリングはもとより、リスクをそのまま「お金」に具体的に換算することを強く推奨します。

その最もたる理由が以下の通りだと考えています。

  1. 経営陣やクライアントへの説明: 具体的なお金に換算することで、経営陣やステークホルダーにリスクの重要性を分かりやすく伝えることができます。具体的な金額が示されることで、リスク管理の優先順位を決定しやすくなり、適切な予算やリソースを割り当てることが可能になります。
  2. 比較と優先順位付け: リスクをお金で換算することで、異なる種類のリスクを比較し、その影響度や優先度を評価することが容易になります。これにより、企業はリスク管理の取り組みを効果的に行い、最も重要なリスクに対処することができます。
  3. 費用対効果(ROI)の評価: リスク対策には費用がかかりますが、リスクをお金で換算することで、その対策の費用対効果を評価することができます。これにより、コスト効率の良い対策を選択し、企業の資源を最適化することが可能になります。
  4. リスク意識の向上: リスクをお金で換算し、社内外に共有することで、従業員や関係者のリスク意識が向上します。リスクに対する認識が高まることで、組織全体でリスク管理に取り組む意欲が高まり、リスク対策が効果的に実施される可能性が高まります。

ただし、すべてのリスクをお金で換算できるわけではなく、また換算には仮定や推定が含まれるため、結果には注意して解釈する必要があります。それでも、お金で換算することでリスク管理に対する理解が深まり、適切な対策が実施される可能性が高まります。

ソーシャルメディアの運用を始める際に、必ず今後リスク管理の「数字化」は目指していくべきでしょう。

Hisami Matsubara

北インド発のソーシャルメディアモデレーション&アナリティクスツールStatusbrewの日本支社代表です。日本市場立ち上げのため、2019年単身で渡印し、インド在住5年目です。 「日本語でありそうでない」マーケティング知見を執筆します。 91年生まれ岐阜県出身。少女漫画と文学作品、ワインとインドが好きです。

Statusbrewを使ってみませんか?

いつでもキャンセルできます