企業が見逃しがちなソーシャルメディアのリスクをスコアリングする方法

2023年4月26日 5 min read

こんにちは、ソーシャルメディアマーケティングのエキスパートStatusbrewです。

Statusbrewでは企業がソーシャルメディアを使ってブランドの価値を維持するためのリソースを常にシェアしています。

ソーシャルメディアのためのリスク管理について日々発信していますが、リスク管理という風呂敷は広げれば広げるほど、考慮すべき点が多く社内を巻き込んだ一大プロジェクトになります。

が、こちらはあなたがソーシャルメディアマネージャーであったり、ブランドとしての方向性を決めるキーパーソンであれば必ずやる価値のある、むしろやるべき施策です。

ソーシャルメディアに限らず、リスク管理とは、大きく3つのフローに分かれます。それが

  • Identify - 広い範囲で考えられるありとあらゆるリスクを認知
  • Assess - リスクを評価して優先度をつける
  • Mitigate - リスクを緩和する

この最初の2つ、リスクを認知(潜在的なものからすでに発生しているもの)して、対策すべき優先度をつけていくには、リスクをスコアリングするという作業が必要です。


リスクスコアは、ソーシャルメディアのリスク管理システムの重要な指標として、ブランドの価値や健全性に影響を及ぼす最も緊急な懸念事項を特定し、対応するのに役立ちます。いやいや、リスクスコアって何?と思われた肩、ご安心ください。こちらのブログでは、リスクスコアとは何か、どのように計算されるのか、なぜ計算する必要があるのか、そして最も効果的に使用する方法について説明します。

正確にリスク スコアリングすることで、企業がソーシャルメディアに関わるリスク管理を構築しやすくなる、非常に重要な要素です。リスクスコアは、適切な方法でリスクを特定して対応するのに役立ちます。

ではそもそも、リスクとはどのように特定するのでしょうか?

(1)内部が起因のリスクスコアリング
(2)外部が起因のリスクスコアリング
(3)リスクスコアの実際の決定方法
(4)リスクスコアを知るってなぜ必要なの?
(5)Statusbrewのソーシャルメディアリスク管理ツール

(1)内部が起因のリスクスコアリング

内部リスクのスコアとは、その名の通りですが社内に起因するあらゆるリスク要因の評価です。インフルエンサーからの苦情コメントと同じくらい、いえもっと言うと、それ以上の損害を引き起こしやすくさらに見逃されがちなのが社内起因のリスクです。

内部リスクは企業の文化に大きく依存しているため、特定するのが最も難しいことがよくあります。マーケティング部門のトップや管理チームは潜在的な内部リスクをより認識していることが多いのですが、「目の行き届かないところ」でのリスクはつきものです。 例えば店舗の従業員や新人研修を受けたばかりでソーシャルメディアリテラシーがまだまだ培われていないアルバイト従業員などはどうでしょうか?

一般的な内部リスクは、 意図しないデータ漏洩、会社経営そのものへの不満の拡散、または非効率的な管理などのヒューマンエラー、不十分な組織構造と報告責任による、誤った情報を流す、会社の資産の損害、またはビジネスを行うための予期しない費用などがあります。

(2)外部が起因のリスクスコアリング


外部リスクスコアとは、社外からビジネスを脅かす可能性のあるあらゆるものを評価するものです。これらのリスクは非常に多様であり、場合によっては「あなたが気づかなければ」警告サインがほとんどないこともあります。潜在的な外部リスクを特定することは、組織ができるだけ早く対応し、被害を軽減するためのプロセスを整備する上で重要です。

(3)リスクスコアの実際の決定方法

できる限り正確にリスクを数値化するには、2つの要素を把握し、言語化していく必要があります。その2つがリスクの特定分析です。

1) リスクの特定

リスクを認知しているという事実が肝です。リスクの特定は、このプロジェクトの初期段階で行うだけでなく、プロジェクトのライフサイクルを通じて再評価する必要があります。最も理想的なサイクルは1年に1度できると良いでしょう。リスクの特定をするには、様々な方法があります。

2) リスクの分析

リスクの特定ができたら、分析によって、そのリスクがプロジェクトや組織にもたらす脅威を理解することができます。このステップでは、リスクの潜在的な質的・量的影響を調査し、マイナスの結果を軽減するためのプロセスを作成するのに役立ちます。言い換えれば、リスク分析とは、確率と起こりうる結果を計算することです。

以下は、リスクを計算するためのいくつかのガイドラインです。

リスク=事象の発生確率×損失の大きさが基本公式です。

発生する可能性の計算方法 - Occurance

・高確率 - (80 % ≦ x ≦ 100%)
・中高確率 - (60 % ≦ x < 80%)
・中低確率 - (30 % ≦ x < 60%)
・低確率(0%<x<30%)

一般に、すでに発生している(過去にした)リスクは100%と計算します。

リスクによる損失の大きさ(影響度) - Impact

高 - 大惨事(評価A - 100)
中 - 重大 (評価 B - 50)
低い - なし(評価C - 10)

リスクスコア - Risk Score

リスクスコアは、「リスクの影響度のスコア」と「リスクの発生確率」を掛け合わせた分析結果です。 これは、万が一発生した際に、意思決定できるようにするための定量的な数値です。

リスクスコア = 発生確率(Occurrence) × 損失の大きさ(Impact)

実際に計算してみましょう。例えば、発生確率が中高確率(60%)で、損失の大きさが重大(評価B - 50)である場合、リスクスコアは以下のようになります。

リスクスコア = 0.6(発生確率60%) × 50(損失の大きさ - 評価B)

リスクスコア = 30

リスクスコアは数値で表現されるため、リスクの優先順位を数値化しやすく、リスク管理の際に各リスクの重要度を比較しやすくなります。この数値をもとに、リスクの軽減策やリソースの配分を決定することができます。

全国展開する飲食チェーンにおけるソーシャルメディアリスクを換算してみます

※本ブログ筆者による試算です。

  1. 発生する可能性(Occurrence) 全国300店舗ある飲食チェーンで、顧客からのネガティブなフィードバック(InstagramやGoogleビジネスプロフィール)が毎月20件あるとします。それを1年に換算すると、240件のネガティブなフィードバックがあると考えられます。1年間に発生するネガティブなフィードバックは240件で、これを全国の店舗数である300店舗で割ります。

240件/300店舗 = 0.8 (80%)

この場合、発生する可能性は高確率(80 % ≦ x ≦ 100%)の範囲に入ります。

  1. リスクによる損失の大きさ(Impact) ネガティブなフィードバックが受け取られた場合、その影響は店舗の評判や売上に影響を与えることがあります。しかし、飲食チェーン全体の規模を考慮すると、影響は限定的であると考えられます。このため、損失の大きさは低いと評価しましょう。

評価C - 10とします。

  1. リスクスコアの計算 リスクスコアは、発生する可能性と損失の大きさを掛け合わせて計算します。

リスクスコア = 発生する可能性(Occurrence)×損失の大きさ(Impact) リスクスコア = 80% × 10 = 8

このサンプルでは、毎月20件のネガティブなフィードバックを受け取るリスクスコアは8となります。この数値を基に、飲食チェーンはリスク管理戦略を策定し、他のリスク要因と比較して優先順位を決定することができます。ただし、これはあくまでサンプルであり、実際のリスクスコアは企業の状況や他の要因によって異なります。

(4)リスクスコアを知るってなぜ大切なの?

リスクスコアリングをすることで、内在化するリスクの優先順位を決定することができるという最大のメリットがあります。

  1. 優先順位の決定: リスクスコアを計算することで、さまざまなリスク要因を比較し、優先順位を決定することができます。これにより、組織は重要度の高いリスクに対処するためのリソースや時間を効果的に割り振ることができます。
  2. 予防策と軽減策の策定: リスクスコアを知ることで、組織はリスクの発生確率や損失の大きさを把握し、それに基づいて適切な予防策や軽減策を策定することができます。これにより、リスクが発生した場合でも損失を最小限に抑えることが可能です。
  3. 組織全体のリスク意識の向上: リスクスコアを明確にすることで、組織全体のリスク意識が向上します。リスクスコアを共有することで、従業員がリスクを理解し、それに対処する方法や意思決定に関与することができます。
  4. コンプライアンスと監査: リスクスコアを計算し、追跡することで、組織は法規制や業界基準に適合していることを示すことができます。これは、監査やコンプライアンス要件に対処する際に役立ちます。
  5. 継続的なリスク管理: リスクスコアを定期的に見直すことで、組織は変化する状況や新たなリスク要因に対応してリスク管理の取り組みを継続的に改善することができます。

ソーシャルメディアマーケティングを行う企業様は、ぜひリスク管理の一歩を考えてみませんか?

Hisami Matsubara

北インド発のソーシャルメディアモデレーション&アナリティクスツールStatusbrewの日本支社代表です。日本市場立ち上げのため、2019年単身で渡印し、インド在住5年目です。 「日本語でありそうでない」マーケティング知見を執筆します。 91年生まれ岐阜県出身。少女漫画と文学作品、ワインとインドが好きです。

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