インドでフォロワー300万人インフルエンサーに学ぶソーシャルメディア(SNS)マーケティング
こんにちは、Statusbrewです。
YouTuberなどソーシャルメディア上でのインフルエンサーの中にも2通りの人間がいます。
2000年代にヒットしたジャンプの少年漫画「バクマン」のセリフの中にあったように、漫画家は計算型の作家と天才型の作家に分けられ、「絶対に当たる」ものを予測して計算し尽くして描くタイプと、何も考えず「好き」を追いかけたものがバンバンヒットを出すというパターンは近年のコンテンツクリエイターにも言えるようです。
YouTubeの世界で言えば、
まず「戦略を練って完成形を目指すタイプ」は中田敦彦さんのようにオーディエンスが求めるものを下準備を重ねて発信する傾向にあります。
YouTuberと呼ぶには大物過ぎますが、逆にホリエモンこと堀江貴文氏はスクリプトなしに思うがままに頭に整列された内容をフルで話してオーディエンスを圧倒的に引き込む、まさに天才型もいます。
今回はパッションと緻密な計算ハイブリッド型のインフルエンサーとそのソーシャルメディアマーケティング戦略、そしてマーケティング以前に考える「コンテンツ消費者への考え方」について、Mayoさんを通してご紹介します。
Mayo(Mayo Japan 呼び方:マヨ)さんは人口14億人のインドで最も認知されている日本人インフルエンサーです。フォロワー数はYouTubeやInstagram総数300万人を超えています。
Mayoさん Instagramアカウント:@mayojapan
Mayoさん YouTubeアカウント(インド向け):मायो जापान Mayo Japan
Mayoさん YouTubeアカウント(日本向け):まよ@インド沼
※インドではTikTokは利用禁止されているため、TikTokではほとんど活動していないそうです。
インドは人口が多い分、有名人著名人の数も多く、一人の人間が埋もれやすいその環境で「一人の外国人が有名になること」は非常にハードルが高いものです。
なぜインドなのか?そのバックグラウンドからマーケティング戦略まで探っていきましょう。
<主な目次>
・「日本国外」で成功したインフルエンサーのバックグラウンド
・その前に:インドでのインフルエンサーマーケティング市場とトレンド
・オーディエンスに特化したソーシャルメディア戦略
<視聴者の反応や好みを理解するためのデータ分析>
<成功した投稿の共通点>
<逆に失敗した投稿の共通点>
・Instagramの本能を解剖するマーケティング思考〜教育、インスピレーション、エンターテイメント〜
・ユーザー認知のための「教育コンテンツ」は比較がポイント
・オーディエンス=ファンとの「エンゲージ」
Mayoさんは元々、日本の大阪大学外国語学科にてヒンディー語を専攻、その後外資コンサルティング企業勤務を経て、大学で得たヒンディー語のスキルを忘れないため、そして「ヒンディー語を日本人に教える」目的で日本人をオーディエンスとしてYouTube動画を公開し始めました。
日本向けにインドについて発信をしていたMayoさんでしたが、インド向けに発信した方が視聴者の母数が人口比でも圧倒的に大きいため、インド発信もスタートしました。インドには、ヒンディー語だけではなくいくつかの現地語が存在するため、英語が共通語として利用されています。インド本社の本ブログ運営元Statusbrewも公用語は英語です。
そのため、インドマーケットを攻めるにあたり、これまで「外国人は英語でコンテンツを作る」場合がほとんどだったのです。一方で、外国人が現地語のコンテンツを作るのは稀です。「外国人でヒンディー語を話すコンテンンツ」を作れば、差別化できると閃いたのが最初です。インド市場は言語的に複雑なので、攻略が難しいと言われていますが、逆に現地語を味方にできるならば、可能性があると見出したのが始まりです。
インドでのインフルエンサーマーケティング市場とトレンド
Mayoさんの話に入る前に、Mayoさんが上陸したインドという市場について解説します。
インドにおけるインフルエンサーマーケティング市場は、年間平均25%で成長していること、またもちろんインドでも「憧れの対象になるセレブリティ」は存在していて、その多くがインドのエンタメのほぼ全てを占めるボリウッド俳優・女優や国民的スポーツであるクリケット選手であることが多いのですが、「憧れすぎるセレブリティよりも身近な誰か」の意見や紹介を参考の対象にしたりする傾向にあるのは、インドの「家族や友達などより身近な人間のコミュニティの意見に傾聴する」文化に根付いているとも言えます。
参照にした記事:Storytelling社 - インドのインフルエンサーマーケティングトレンドと事例ご紹介、選定時の注意点まで
インドのオーディエンスを決定するきっかけ
インドのフォロワーを対象にすると決めたとき、どのようなオーディエンスセグメンテーションを行ったのでしょうか?
「日本に興味のある、ヒンディー語を話すインド人」をターゲットとして始めたMayoさん、試行錯誤をしているうちに、「インドを好きな日本人に興味を持ってくれるインド人=愛国心の強いインド人」の視聴が多いことに気づきました。そのため、上記2つの属性を持ったインド人の両方に楽しんでもらえる動画を作るように意識しています。
Mayoさんの魅力の一つである部分が自己認識の徹底でしょう。
インドはその国や文化自体の幅広さや「面白さ」から、世界中の旅行者やビジネスマン、コンテンツクリエイターが訪れます。もっとはっきり言ってしまえば「コンテンツ化しやすい」のです。
その良い例が
・ガンジス川に飛び込んでみる
・ストリートフードにチャレンジしてみる
などであり、このブログの読者の方もYouTubeなどでみたり聞いたりしたことはあるのではないでしょうか。
オーディエンスは決して騙せません。
コンテンツとして「一時的な消費」がされやすい(インドという国の方々からしたら、不本意な部分も多いと思います)そのマーケットで、オーディエンス目線で言えることは多々あります。
「自分の国は人口が多いから、フォロワーや視聴数の"母数"が取れる!とターゲットにされやすい」ということを百も承知しています。
そしてMayoさんのオーディエンスを占めるデジタルネイティブ世代は「どういう意識や意図があってコンテンツを作成しているのか」を瞬時に消費し切る前に見抜きます。
Mayoさん曰く、「生半可なコンテンツは、「視聴回数稼ぎに来た外国人」と思われて、ファン化しにくい。そのため、現地語であるヒンディー語を話すのはもちろん。現地の文化を理解し、現地の人々と対話し、インド人よりもインドに詳しくなれるように、心がけている。」とのこと。
これまでに公開した多くの動画の中で、成功した要因、また失敗した要因を共通点として分析していただきました。
<成功した投稿の共通点>
インド的要素、日本的要素、笑える要素の3つが入っているもの
インド的要素→親近感
日本的要素→新しい情報、知的好奇心を刺激
笑える要素→離脱率減少
<逆に失敗した投稿の共通点>
あまりにもコアな日本文化に関する動画を作っても、伸びないことも経験したのだそうです。
「ルーブル美術館に行っても、ほとんどの人はモナリザにしか感動できないのと同じだ」と言います。
普通の人は、「自分がすでに知っていること」しか興味がなく、全く新しい概念や知識を押し付けられても、特に興味がわかない。大事なのは、相手がすでに知っていること、相手の文化と絡めて、面白いコンテンツを配信すること。
オーディエンスが動画コンテンツに求めるもの
Mayoさんは本能的に、Instagramなどの動画特化コンテンツにオーディエンスが求める最も大事な3本の柱を捉えていることが印象的です。
それが、
・教育 - Education
・インスピレーション - Inspiration
・エンターテインメント - Entertainment
です。
Instagramに特化した話をするのであれば、Mayoさんはこれらの要素をどのように組み込んでコンテンツを作成しているのでしょうか?
彼女はおおよその要素を満遍なくコンテンツに取り入れていることが伺えます。教育コンテンツであれば「比較」を意識し、エンターテインメント要素を高めるために一つでもユーザーが気づくための「あっ」といポイントを入れています。
エンターテインメント要素を高めるため、どのようなアプローチやテクニックを利用するか、例えば彼女はダンスならヒールで踊る、サリーで踊る、絶景で踊る、リフトする、など、ただ「振り付けのある曲を踊る」だけなら正直ほとんど誰でもできるが、アルゴリズムゲームで勝つには、「1秒でも長く動画を見てもらう」「コメントしてもらう」レベルのエンタメ性が必要です。
エンタメ要素以外にも、Mayoさんの「教育コンテンツ」はリサーチと緻密な計算が込まれています。
ユーザー認知のための「教育コンテンツ」は比較がポイント
Mayoさんは、日本の文化や観光名所、企業とのPRコラボレーションで商品などを紹介していますが、インドと比較することで、インドとの関係を作る仕掛けをしています。その上で、インドに関する、インド人も知らない情報も組み込みます。こうすることで、「日本人なのにインド人にインドのことを教えている生意気な人」ではなく、日印の架け橋として、新しい情報を提供できるというアイディアの元に数々のコンテンツが生まれています。
一般的に、オーディエンスは教育コンテンツにおいて「比較対象」が含まれていることを好む傾向があります。少しテクニカルな内容になりますが、理由としては以下の5つがポイントではないでしょうか。
・より深い理解: 比較を通じて、オーディエンスはトピックに対するより深い理解を得ることができます。異なるアプローチや視点を比較することで、視聴者は情報をより広い文脈で捉えることができます。
・関連性: 視聴者は自分自身の経験や知識と教育コンテンツを関連付けることができます。これにより、新しい情報を既存の知識に結び付けやすくなります。
・批判的思考: 「比較対象」を提示することで、視聴者は異なる情報や意見を検討し、分析する機会を持つことができます。これは、オーディエンスの批判的思考スキルを育て、情報を評価する能力を高めます。
・意思決定: 特に製品やサービスのプロモーションを含めた関する教育コンテンツの場合、比較情報は視聴者が購買決定を下す際の有益な材料になります。
・興味深く魅力的: 比較はコンテンツをより興味深く、魅力的にするのに役立ちます。これにより、視聴者の注意を引きつけ、エンゲージメントを促進します。
MayoさんはまさにInstagramとYouTubeを比較学習のハブとして非常に上手く利用しています。。
異なる地域のオーディエンスが求める教育系(知識やTips系)コンテンツの種類をまずは広げてみましょう。下記に説明していることは、Mayoさんの動画コンテンツの中でよく練られていると思う対象は以下の通りです。
- 比較学習コンテンツの種類 a. 異なる文化価値を比較する。 b. 歴史的な出来事とその影響を比較する。 c. 経済システムを比較する。 d. 言語とコミュニケーションスタイルを比較する。 e. 技術の進歩を比較する。 f. 環境保全の取り組みを比較する。
オーディエンス=ファンとの「エンゲージ」
Mayoさんの動画特にInstagramは圧倒的なエンゲージメント率が特徴的ですが、
・フォロワーと積極的に関わるためにどのような戦略を用いているか
・コメントやメッセージにどのように対応して、コミュニティとのつながりを強化しているか
・ライブ配信やQ&Aセッションを通じて、リアルタイムでフォロワーと交流することの重要性
についても質問したところ、オーディエンスにとってユーザーエクスペリエンスは何か?を深く捉えています。
大量消費されるソーシャル上では一度見た投稿、一度見た人など、すぐに忘れられてしまいます。その一人の見込みユーザー(ファン)に強く心に残るために、リアルタイムコミュニケーション=この人と会話をした経験が必須とのこと。
会話といっても「メッセージ返信する」だけがソーシャルメディアの会話ではありません。ストーリーズ等でファンが@メンションしてくれている投稿をシェアし返すことも交流です。
Instagramへのコメント返しは必須、またインフルエンサーならではの否定的なコメントもリアクションとして当然のことながら受け取ります。
「建設的なネガティブコメントは返信する。いい議論ができれば面白いと思っている。」という真摯かつ忽然とした姿勢、オーディエンスを「対人」として見ているからこそのアイディアなのではないでしょうか。
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インフルエンサーとして、企業からの協業オファーなども多い中で、「顧客中心主義」でインドというマーケットへの感謝、マーケットの理解とリサーチに全てを尽くしているからこそ比例する結果がMayoさんにはあります。
顧客中心主義と述べましたが、これは「顧客=ファンやオーディエンス」の望むことを全て行う、のではありません。重要なことは「何をしたら最高の体験をしてもらえるか」に重きをおいて考えることです。もともと商品やサービスを扱う企業向けに作られた言葉ですが、これは現代インフルエンサーという巨大マーケットにいる「いち人」にも言えます。
すべてのフォロワーをオーガニックで地道に獲得してきたMayoさん。「このインフルエンサー、変わっちゃったね」という感覚やコメントは、どのインフルエンサーにも業界トレンドが移り変わるごとにオーディエンスから言われる内容としてありがちですが、「不信感をもたれない、信用してもらえる」内容を強い意志とともに発信し続けているのが、ファンが続く秘訣でしょう。
Statusbrewではインフルエンサー個人やインフルエンサーを起用するエージェント様のソーシャルメディア運用を支援するソフトウェアを開発しています。
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